PKD腎臓内科クリニック

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院長ブログ

トルバプタンのはなし(8) ~水分は足りてるの? ナトリウム(Na)をみる~

2023/01/06

今回は、ナトリウム(Na)についてです。

皆さんの血液検査結果の中に、ナトリウム(Na)という項目があります。

これは、「体の中のNaが多いかどうか」や「塩分を摂りすぎた結果」を見たものではありません。

血液中のNaの “濃度” を表しています。
“濃度” なので、文字通り、血液にある水分の中にNaがどれくらいの割合で存在するのかを見ています。

正常では、140 mEq/L です。(mEq(メック)は、Naの単位)

135未満になると低Na血症、145以上になると高Na血症となります。

Naと水分の割合を見ているので、低Na血症だからといって、必ずしも体の中のNaが少ないわけではありません。多くの場合、水分が多くて相対的に ”濃度” が低くなっているのです。

 

 

では、トルバプタン(サムスカ®)を飲むとどうなるでしょうか。

尿に水がたくさん出て行くことにより、体内の水分が少なくなるので、一時的にNa濃度は上がります。
ただ、同時にのどが渇くので、失われた水分を補うことによって、Na濃度を正常に保つようになります。

しかし、十分に水分摂取ができていない場合は、高Na血症になってしまいます(上図右)。

逆に、”トルバプタンのはなし(2)“で書いたように、水分を摂りすぎると、低Na血症になってしまいます(上図左)。

 

このように、血液検査の中のナトリウム(Na)は、水分が適切に摂れているかの一つの目安になります。

トルバプタンを飲んでいる場合は十分に水分を摂ったほうがいいので、140よりも高ければ水分が足りない、135未満であれば水分の摂りすぎと考えてください。

 

 

さて、“トルバプタンのはなし(3)” で「半分の方が軽度の脱水であるが、腎臓くんが助けてくれる」ということを書きました。

水分摂取が追い付いていない場合、体がこれ以上脱水にならないように、腎臓くんが頑張って尿にNaを出さないようにしてくれています。

ただ、脱水状態が改善されるわけではないので、トルバプタンの効果は減ってしまいます。

 

その状態をもう少し詳しくわかる指標が、尿中Na排泄率(FENa)です。(*1)

血液と尿の検査から計算するものなので、検査結果には出てきません。

ただ、十分に水分摂取ができているかどうかを判断するにはとても役に立ちます。

 

トルバプタンを飲み始めて、十分に水分摂取ができている方は、すぐにFENaが上がります(青)。

逆に水分がとれていない方は下がります(赤)。(図*2)

 

 

トルバプタンに対して腎臓くんが慣れてくると、少しずつ尿量が減ってきます。

また徐々に水分摂取もできてくるようになるので、図のようにFENaが上がってきます。

飲み始めはこのような状態になりますので、無理する必要はありません。できる範囲で水分摂取を意識するようにしましょう。

 

 

(補足)

*1 尿中Na排泄率(Fractional Excretion Na:FENa)

尿に排泄されるクレアチニンとNaの割合をみたものです。

 

FENa(%)=(尿Na/血液Na)÷(尿Cr/血液Cr)x100

 

明確な基準はないものの、トルバプタン内服している場合、1%未満だと脱水傾向、1%以上であればトルバプタンの効果を引き出せていると考えられます。

ただ、腎機能や塩分摂取量によってFENaの値は変わってくるので、絶対的な数値よりも経時的な変化を見ることによって、水分が摂れているかどうかを見極めていくことが大事です。

 

 

*2 Akihisa T, et al. Clin Exp Nephrol. 26;540-551, 2022.

 

 

 

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