多発性嚢胞腎のはなし(4)~脳動脈瘤の検査(頭部MRA)受けてますか?~
2023/05/10
多発性嚢胞腎(ADPKD)では、脳動脈瘤を合併することが一般の方よりも多いことが知られています。
さらに、家系の中で脳動脈瘤やくも膜下出血を起こした方がいる場合には、その合併頻度が高いといわれています。
脳動脈瘤は、ほとんど前触れの症状がなく、突然破裂し、くも膜下出血を起こすことがあります。
くも膜下出血は命にかかわる合併症であり、それを事前に察知するために、ADPKDでは頭部MRA(Magnetic Resonance Angiography;核磁気共鳴血管撮影)検査で脳動脈瘤のスクリーニングをします。
ADPKDでは、一般の脳動脈瘤に比べて小さいものでも破裂する危険性が高いと言われており、少しでも疑いがある場合は脳神経外科の専門医に診てもらいます。
最近、私たちは、次に該当する患者さんは特に脳動脈瘤合併のリスクがあることを報告しました。(*1)
*家系で脳動脈瘤やくも膜下出血の患者さんがいる場合。
*腎臓が大きい方(両側腎容積(TKV)1000mL以上)
*腎機能が低下している方(慢性腎臓病(CKD)ステージ4~5)
また「嚢胞腎が進行しやすい(腎臓が大きくなりやすい、また腎機能の悪化が早い)方」と「脳動脈瘤ができる方」の遺伝子変異のタイプが共通していることについても報告しました。(*2)
これらは、嚢胞腎が進行するにつれて、脳動脈瘤のリスクが上がることを示すものです。
脳動脈瘤がいつできてくるかは予測不可能です。
したがって、頭部MRA検査は定期的に行うことが奨められます。
*脳動脈瘤やくも膜下出血の家族歴がある方: 1年に1回
*進行性の嚢胞腎(腎臓が大きい・腎機能が低下している)の方: 少なくとも3年に1回。
*それ以外の方: 少なくとも5年に1回。
ただ、MRI(Magnetic Resonance Imaging;核磁気共鳴画像)検査は体の中に磁石に反応する金属などが入っていると検査を受けられません。
やけどの原因となったり、その機器が壊れてしまったりします。
また、閉所恐怖症の方も検査を受けることが難しいことがあります。
最近は、オープン型MRIといって、頭の左右の空間が空いている機器のある検査施設もあります。
また、一時的に鎮静薬を飲んで行うこともあります。
それでもMRI検査ができない場合には、CT血管造影検査などを行うこともあります。
これらについては、主治医とよく相談しましょう。
(文献)
*1.Kataoka, H., et al. “Impact of kidney function and kidney volume on intracranial aneurysms in patients with autosomal dominant polycystic kidney disease.” Sci Rep 12(1): 18056,2022.
*2.Kataoka, H., et al. “Mutation Type and Intracranial Aneurysm Formation in Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease.” Stroke: Vascular and Interventional Neurology 2:e000203,2022.