eGFRのはなし(5)~CKDにおけるeGFRの役割~
2026/01/25
■推算糸球体濾過値(eGFR)とは
腎臓病は自覚症状が出にくいため、腎機能の低下を早期に発見することが何より大切です。
しかし、前回紹介した「クリアランス検査」は正確である反面、健康診断などで広く行うには身体的・時間的負担が大きすぎます。
そこで考え出されたのが、血液検査(主にクレアチニン値)からGFRを“推定”する方法、すなわち推算糸球体濾過値(eGFR:estimated glomerular filtration rate)です。
もともとは米国で、「(イヌリンクリアランス検査で測定した)正確なGFRの値」と、その時の「性別、年齢、クレアチニン値」を照らし合わせた膨大な研究(MDRD研究など)から導き出されました。

現在では、図のように「性別、年齢、クレアチニン値」という3つの項目を入力するだけで、瞬時にeGFRが計算できるようになっています。
このeGFRの登場こそが、「CKD(慢性腎臓病)」という概念を世に広める決定的な役割を果たしました。
■CKDという概念が登場した背景
以前は、腎機能障害の基準として、かなり進行した状態である
▪「クレアチニンが2mg/dL以上」
▪「クレアチニンクリアランスが30mL/分以下」
が「慢性腎不全」として扱われていました。
それ以外の腎臓病は、原因となる病気(「慢性糸球体腎炎」や「糖尿病性腎症」など)ごとに個別に対策が行われていました。
しかし、以下の問題が浮き彫りになってきました。
▪透析患者の急増:世界的に透析が必要な方が増え、医療費や社会的負担が大きくなったことから、早期発見・対策が急務となった。
▪心血管疾患のリスク:腎臓病の患者さんは、「透析になる前に心筋梗塞や脳血管障害などの心血管疾患(CVD:Cardio‐Vascular Disease)で亡くなるリスクが高い」ことがわかってきた。
こうした背景から、2002年に米国腎臓財団によって「慢性腎臓病(CKD)」という新しい概念が提唱されました。
これは、「原因が何であれ、腎機能が低下していれば早期から管理しよう」という考え方です。
■eGFRの役割と革新性
前回までに紹介したように、「クレアチニン」を見ているだけでは早期発見が難しく、また「クリアランス検査」は簡単に行えるものではありません。
一方、eGFRの最大のメリットは、「血液検査だけで計算できる」という点です。
これにより、腎臓病の重症度を誰でも共通の「ステージ」として分類できるようになりました。
CKDステージ 1 eGFR 90以上
CKDステージ 2 eGFR 60~89
CKDステージ 3a eGFR 45~59
CKDステージ 3b eGFR 30~44
CKDステージ 4 eGFR 15~29
CKDステージ 5 eGFR 15未満
※ステージ1と2は、「尿異常や画像検査などで“腎障害の所見”がある場合」に「CKD」と診断されます。
※一方で、eGFR 60未満(ステージ3a~5)が3か月以上続く場合は、このeGFR値だけで「CKD」と診断されます。
■「eGFR 60」はなぜ重要なのか
ここで大事なのが、「eGFR 60」が一つの境界になっている点です。
この「60」という基準はどのように決まったのでしょうか。
これは、「eGFRが60を下回ると、腎臓病の悪化や心血管病(心筋梗塞・脳血管障害)のリスクが明らかに高くなる」という研究結果(MDRD研究)に基づいています。
すなわち、「eGFR 60」というのは「リスクが高まる目安」として設定された数値なのです。
eGFRが普及したことで、健診でも簡便に腎機能をチェックできるようになりました。
その結果、eGFR<60に該当する方が一定数見つかるようになり、「健診で腎機能低下を指摘されて受診する」方も増えています。
では、健診でeGFR<60を指摘された場合、本当に「CKD」なのでしょうか。
次回は、健診で異常を指摘されて当院を受診した方の実際のデータをもとに解説します。

