PKD腎臓内科クリニック

03-5541-0077

  • 診療時間:9:30~13:00 14:00~18:00
  • 受付時間:9:20~12:30 13:50~17:30
  • 休診:木曜、土曜午後、日曜、祝日

院長ブログ

eGFRのはなし(12)~クレアチニン/シスタチンC比とは?~

2026/03/05

前回、シスタチンCの話をしましたが、実はシスタチンCは、クレアチニンと組み合わせることで、筋肉量の評価、さらに「サルコペニア」の指標の一つとして使われることがあります。

 

■サルコペニアとは?

近年、「フレイル」とか「サルコペニア」という言葉を耳にする機会が増えたと思います。

▪フレイル:身体面だけでなく、心理・精神面、社会面も含めた“虚弱”な状態(語源:英語のFrailty)

▪サルコペニア:主に加齢に伴う「筋力低下」と「筋肉量の減少」の状態(語源:ギリシャ語の筋肉(Sarx)と喪失(Penia)の造語)。フレイルの主要な原因の一つ。

 

この「サルコペニア」の最新の診断基準(2025年版)では、

▪筋力の低下(握力など)

▪筋肉量の減少(四肢骨格筋指数[Skeletal Muscle Mass Index;SMI])

の両方を満たすことで確定診断とされます。

しかし、筋肉量の指標であるSMIの測定には、専用の体組成計(BIA法;生体電気インピーダンス法)あるいは特殊なエックス線検査(DXA法;二重エネルギーエックス線吸収法)が必要であり、健診やクリニック外来ですぐに測れないこともあります。

 

■クレアチニン/シスタチンC比(Cr/Cys比)とは?

そこで注目されたのが、血液検査の結果から筋肉量を推定する方法です。

2017年に、血液中の「クレアチニン/シスタチンC比(Cr/Cys比)」が、筋肉量を評価する指標「サルコペニア・インデックス(Sarcopenia Index;SI)」として提唱されました。(文献1)

その後、日本人の地域住民を対象とした報告(文献2)、さらに診断の正確性を分析したメタ解析の報告(文献3)など、国内外でこの指標を用いたサルコペニアの研究が多く報告されています。

 

なぜ、この「割り算」で筋肉の状態がわかるのでしょうか?

それは、以前お話ししたように「クレアチニンは筋肉量の影響を受けやすい一方、シスタチンCはその影響を受けにくい」という性質があるからです。

 

■Cr/Cys比:当院受診患者さんでの分布

日本人のデータでは、Cr/Cys比の平均は男性で1.1前後、女性で0.9前後とされています。

大まかな目安ですが、男性で0.9、女性で0.7を下回るようであれば、筋肉量が少ない可能性があります。

※Cr/Cys比=血清Cr(mg/dL) ÷ 血清CysC(mg/L

 

では、実際にeGFR60未満で当院を受診された患者さん(男性135人、女性237人)のデータでCr/Cys比の分布を見てみます。

▪男性:0.9未満の方はおらず、8割以上が平均の1.1を上回っていました。

▪女性:0.54の方が1名いた以外は、0.7より大きく、8割以上が0.9を上回っていました。

この結果から、健診でのeGFR低下を指摘され受診された方には、Cr/Cys比が低い方は少なく、むしろ高めの方が多いことがわかります。

 

■Cr/Cys比は健診eGFRの解釈に役立つか?

これまで、健診のeGFRでは、「脱水」と「筋肉量」の影響を大きく受けることをお話してきました。

脱水の影響は、血液の濃さ(浸透圧など)を調べることである程度推定できます。

しかし、筋肉量は見た目だけでは判断しにくいことが少なくありません。

筋肉量を直接測定できれば理想ですが、それが難しい場合、Cr/Cys比は筋肉量の影響を推定する参考値として役立つ可能性があります。

 

実際に、当院の外来データを、以下の2つのグループに分けて比べてみました。

▪「改善した人」:外来での再検査でeGFRが60以上に改善したグループ

▪「60未満のままの人」:再検査でもeGFRが60未満だったグループ

その結果、男女ともに「60未満のままの人」の方が、「Cr/Cys比が高い」傾向がみられました。

Cr/Cys比が高い方では、筋肉量の影響でクレアチニンが高めになりやすく、同じ腎機能でもeGFR-Crが低めに算出される可能性があります。

つまり、再検査をしてもeGFRの数値が上がらない理由は、必ずしも「腎臓が悪い」からだけでありません。

筋肉量の影響によって、計算上のeGFR-Crが低く出続けている人も含まれていると考えられます。

 

※ 女性で0.54の方が1名みられましたが、外来ではeGFR‐Cr 60以上でした。

ただし、Cr/Cys比が極端に低い場合は、筋肉量低下の影響でeGFR‐Crが実際より高めに見えることがあります。

この点は次回あらためて解説します。

 

■まとめ

Cr/Cys比は、見た目だけでは分かりにくい「筋肉量の影響」を考えるうえで、ひとつの参考になる指標です。

健診でeGFRが低く出た背景には、単なる腎機能低下だけでなく、筋肉量の影響が含まれている可能性があります。

次回は、Cr/Cys比とeGFRの関係について当院データでみていきます。

 

 

【文献】

1.Kashani KB, et al. Evaluating Muscle Mass by Using Markers of Kidney Function: Development of the Sarcopenia Index. Critical Care Medicine. 45:e23-e29, 2017.

(SIを提案し、ICU患者でCTでの筋肉量(および転帰)との関連を検討した最初の報告)

2.Kusunoki H, et al. Relationship between sarcopenia and the serum creatinine/cystatin C ratio in Japanese rural community-dwelling older adults. JCSM Clinical Reports 3:1–14. e00057, 2018.

(日本人の地域在住高齢者でCr/CysC比と筋肉量・身体機能/サルコペニアとの関連を検討した報告)

3.Lin T, et al. Diagnostic test accuracy of serum creatinine and cystatin C-based index for sarcopenia: a systematic review and meta-analysis. Age and Ageing 53:afad252, 2024.

(Cr/CysC比を含むCr・CysC由来指標の診断精度を系統的に評価したメタ解析の報告)

 

 

ご予約・ご相談はお気軽に

PKD腎臓内科クリニック

都営浅草線『宝町駅』徒歩3分

ご予約・ご相談はお気軽に


電話する