PKD腎臓内科クリニック

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院長ブログ

eGFRのはなし(14)~eGFRの基準値は100ではない~

2026/03/31

前回「eGFRを代表的なパターンに分けて考える」という予告をしましたが、その前に整理しておきたいことが2つあります。

「eGFRの基準値はどのくらいなのか」

「eGFR-CrとeGFR-Cysの値にどのくらいの差(乖離;ギャップ)があるのか」

今回は、この2つを2回に分けてみていきます。

 

■eGFRの基準値

日本人用eGFR計算式を使用するとeGFRが低めに出ることを(eGFRのはなし(7))でお話しました。

では実際に、日本人におけるeGFRの基準値はどのくらいのなのでしょうか。

 

健常者を対象にした報告は限られていますが、今回は2023年に報告されたFujiiらの論文をもとに検討してみました。(文献1)

▪対象:腎疾患がないと自己申告した40歳以上の健診受診者469人

▪性差:男性184人、平均年齢66.0歳、女性285人、平均年齢65.6歳

 

これらの方を論文のデータから以下の4つの式で比較してみます。

1.JPN-Cr:日本人用計算式を用いたeGFR-Cr

2.JPN-Cys:日本人用計算式を用いたeGFR-Cys

3.EPI 2009-Cr:国際的な計算式CKD-EPI(2009)のeGFR-Cr (※)

4.EPI 2012-Cys:国際的な計算式CKD-EPI(2012)のeGFR-Cys

(※CKD-EPIでは2021年に改訂されたのはCr式とCr+Cys併用式であり、Cys単独式は2012年版が用いられます。そのため、ここでは2012年Cys式に対応する形で2009年Cr式を並べています。)

は平均値、縦線は標準偏差の範囲を示します。標準偏差は数値のばらつきの目安で、おおよそ7割の人がこの範囲に入ると考えられます。)

この結果を見ると、日本人式eGFR-Cr(JPN-Cr)は平均が71.2で、100から大きく離れており、100が一般的な基準値とは言えないと思います。

 

日本腎臓学会のガイドラインでは、eGFRの基準値を具体的に示していませんが、

▪eGFR 90以上:正常

▪eGFR 60~89:正常~軽度低下

としています。

これに当てはめてみると、この論文の対象者を日本人式eGFR-Crで計算した場合、多くの方が「正常~軽度低下」に相当します。

一方、国際的な基準であるCKD-EPI 2009 Crあるいは日本人用も含めたCys式でみると、多くの方が「正常」に該当し、ガイドラインの区分とおおむね一致しています。

 

なぜ、このようなことになるのでしょうか?

この理由として、

▪ガイドラインは、国際的に使われているCKDの基準をもとに作られていること

▪日本人式eGFR-Crが低めに計算されるよう作られていること

の2つが挙げられます。

 

多くの書籍やネット情報では、eGFRは「100が正常」とされ、eGFRを「パーセント(%)」や「100点満点の点数」のように説明していることがあります。

eGFRが60なら、「腎臓の力は60%しかない」「腎機能は60点」といった説明です。

 

厚労省のホームページでも

『eGFRは正常値がおおよそ100 mL/分/1.73㎡であることから、その値は腎臓の働きが「正常に比べておよそ何%か」を表しています。』

という記載がされています。(参考資料1)

 

腎臓の働きを一般の方に分かりやすくイメージしてもらうための表現としては理解できます。

しかし、上述した結果からわかるように、日本人式eGFR-Crを用いた実際の検査結果を見る際に、そのような説明をそのまま当てはめるのは適切ではありません。

 

eGFRは“点数”でも“%”でもなく、計算式から求められた推定値です。

とくに日本人式eGFR-Crは低めに出るため、その数字をそのまま腎臓の能力の割合のように受け取るべきではありません。

むしろ、大切なのは、ご自身のeGFRを100と比べることではなく、ご自身にとっての基準値として捉え、そこからどう変化していくかを見ることです。

 

■eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ

先ほどのグラフにもあるように、日本人式で計算したeGFR-CrとeGFR-Cys、それぞれの平均が71.2、102.8と大きな差がありました。

次回は、eGFR-CrとeGFR-Cysの間に実際どのくらいの差があるのか、当院のデータをもとにみていきます。

 

【文献】

1.Fujii R, et al. Comparison of glomerular filtration rate estimating formulas among Japanese adults without kidney disease. Clinical Biochemistry 111:54–59, 2023.

【参考資料】

1.厚生労働省 WEBマガジン「厚生労働」2025年3月号 みんなで知ろう!からだのこと『第7回 慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?』

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202503_004.html

 

 

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