PKD腎臓内科クリニック

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院長ブログ

eGFRのはなし(16)~eGFRをパターン別に考える(1)脱水の影響がある場合~

2026/04/18

これまで、本当は「慢性腎臓病(CKD)」に該当しないのに、健診でeGFR-Crが60未満となり、CKDの疑いと判定される理由を述べてきました。

その主な理由は、日本人eGFR計算式(eGFRのはなし(7))、脱水(eGFRのはなし(9))、筋肉量(eGFRのはなし(10))です。

今回から2回に分けて、健診でeGFR60未満のために受診した方にみられる代表的なパターンを紹介していきます。

(※ 以下に示すのは、当院でみられた傾向をもとに作成した模式例です。数値や経過は説明用に再構成しており、特定の患者さんを示すものではありません。)

今回は、eGFR-Crが60未満となった背景に、脱水の影響が含まれていた3つのパターンをみていきます。

 

■パターン1:要因「脱水」(女性)

健診前日から食事制限、水分制限があり、当日の朝もほとんど水分を摂らずに健診会場に行きました。
このような場合、健診時に喉の渇きを自覚していることも少なくありません。

一方、外来受診時は普段通りに食事・水分を摂って来院しました。

【外来検査の結果】

(1)eGFR-Cr : 60以上に改善していました。

(2)血清浸透圧:低めであり、脱水はないと考えられました。

(3)Cr/Cys比:平均的であり、筋肉量は特に多くも少なくもないと考えられます。

(4)eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ: eGFR-Cysも高い値でしたが、それほど大きくはありませんでした。

【解説】

このパターンでは、健診前日~当日にかけての食事・水分制限による「一時的な脱水」が原因と考えられます。

健診時のeGFR-Crの低下は、腎機能そのものによるものではなく、外来で普段通りに水分を摂って検査すれば数値が戻る、最もシンプルなパターンです。

 

■パターン2:要因「脱水」「筋肉量が多い」「夏の健診」(女性)

パターン1と同様に、健診時には脱水状態だったと考えられます。

【外来検査の結果】

(1)eGFR-Cr : 60以上でしたが、パターン1と比べると低めでした。

(2)血清浸透圧:低めであり、脱水は改善していると考えられました。

(3)Cr/Cys比:平均より高めであり、筋肉量が多いことが示唆されます。

(4)eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ:大きく開いており、eGFR-Cysはとても高い値を示していました。

【解説1】

パターン1との違いは、脱水が改善したにもかかわらず、思ったほどeGFR-Crが上がっていなかったということです。

その理由として、筋肉量が多い方では、普段からeGFR-Crが実際の腎機能より低めに出やすいことが考えられます。

【追加情報】

このパターンでは、「夏の健診」という季節要因が加わると、健診でのeGFR-Crがさらに低くなり、60という基準値を下回りやすくなります。

ここで、eGFRの推移をグラフで示します。

(グラフでは、健診時期の変更に伴うeGFR-Crの推移を色分けして示しています。
なお、ΔeGFRは経過全体における年間eGFR低下速度を示しています。)

【グラフの説明】

3年前まで4月に健診を受けていましたが、その後8月に受けるようになりました。

そのため、夏の脱水の影響が加わり、健診時のeGFR-Crが急に低下しているように見えます。

しかし、健診結果が届いたあと、秋から冬に受診したときには、上に示したように脱水はなく、eGFR-Crはもとのレベルに戻っていました。

【解説2】

このパターンでは、もともと筋肉量が多いためにeGFR-Crが低めに出やすく、そこに「夏の健診」が加わることで、さらにeGFR-Crが下がったと考えられます。

まとめると、健診時のeGFR-Cr低下は、腎機能そのものの低下ではなく、脱水、筋肉量の多さ、夏の健診という条件が重なったためと考えられるパターンです。

 

■パターン3:要因「普段からの脱水傾向」「筋肉量が多い」(男性)

パターン1、2と同様に、健診時には脱水状態でした。

【外来検査の結果】

(1)eGFR-Cr : パターン1、2と異なり、eGFR-Crは60未満のままでした。

(2)血清浸透圧:高めであり、脱水傾向があると考えられました。

(3)Cr/Cys比:平均よりかなり高く、筋肉量が多いことが示唆されます。

(4)eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ:パターン2と同様に、大きく開いていました。

【解説】

このパターンの方は、普段から水分摂取が少なく、尿の回数が少なめで、いつも尿が濃い傾向があると考えられます。

このように、筋肉量が多く、脱水傾向があると、eGFR-Crが低めのままになることがあります。

eGFR-Cysは十分高い値であり、「生活習慣(水分摂取不足)」と「体質(筋肉量)」の両方が重なって、eGFR-Crが低く出ているパターンです。

 

【今回のまとめ】

これら3つのパターンに共通しているのは、「eGFR-Crが低くても、腎機能そのものが低下しているとは限らない」ということです。

・水分を十分に摂れていたか

・筋肉量や体格の影響はないか

・夏場の健診ではなかったか

このような背景を一つずつ確認していくことで、健診でeGFR-Crが低く出た理由が見えてきます。

その結果、必要以上の不安を減らすことにもつながります。

 

次回は、脱水では説明しにくい別のパターンについて考えていきます。

 

 

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