eGFRのはなし(17)~eGFRをパターン別に考える(2)脱水では説明がつかない場合~
2026/04/27
前回は、健診でeGFR60未満のために受診した方にみられる代表的なパターンのうち、脱水の影響を含むパターンをみてきました。
今回は、脱水では説明がつかない別のパターンについて考えていきます。
(※ 以下に示すのは、当院でみられた傾向をもとに作成した模式例です。数値や経過は説明用に再構成しており、特定の患者さんを示すものではありません。)
■パターン4:要因「筋肉量が多い」(女性)
健診時は食事制限のみで水分制限はありませんでしたが、eGFR-Crは60未満でした。

【外来検査の結果】
(1)eGFR-Cr :60未満のままで、ほとんど変化はありません。
(2)血清浸透圧:低めで、脱水はないと考えられました。
(3)Cr/Cys比:平均より高く、筋肉量が多いことが示唆されます。
(ここでいう筋肉量が多いというのは、いわゆる“筋肉質”だけでなく、“高身長など体格の大きい”方も含まれます)
(4)eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ:大きく、eGFR-Cysは十分高い値でした。
【解説】
このパターンの方は、普段から意識して水分を摂っており、薄い尿がしっかりと出ていると考えられます。
それにもかかわらず、eGFR-Crが低めのままであるのは、筋肉量が多いため、クレアチニンが高めになりやすいからです。
一方で、eGFR-Cysは十分高い値であり、「eGFR-Crが低くても、腎機能そのものは正常に保たれている」と判断できるパターンです。
■パターン5:要因「もともと腎臓が小さい」(女性)
次は、これまでのパターンとは異なり、実際に腎機能がやや低いと考えられるパターンです。
健診時は食事制限のみで、水分制限はありませんでしたが、eGFR-Crは60未満でした。

【外来検査の結果】
(1)eGFR-Cr :健診時より改善していましたが、60未満のままでした。
(2)血清浸透圧:高くなく、普段どおりに水分を摂っていたと考えられました。
(3)Cr/Cys比:平均より低めで、筋肉量はやや少ないことが示唆されます。
(4)eGFR-CrとeGFR-Cysのギャップ:わずかでした。
【解説】
このように、脱水傾向はなく、Cr/Cys比が低めで、eGFR-CrとeGFR-Cysとのギャップも小さい場合には、実際に腎機能が低下している、すなわちCKDに該当する可能性を考える必要があります。
こうした場合には、腎機能低下の原因として、次のようなものがないかを確認します。
(1)全身性の病気(高血圧、糖尿病など)
(2)糸球体の病気(糸球体腎炎など)
(3)尿細管の病気(尿細管間質性腎炎など)
(4)腎臓の形や大きさの異常(嚢胞腎や低形成腎など)
検査の結果、
(1)健診で全身性疾患は認めず、
(2)健診・外来ともに蛋白尿・血尿はなく、
(3)外来で尿細管マーカー(尿細管から出る酵素NAG、尿細管性蛋白α1MG)も正常でした。
そこで、(4)の形や大きさの異常を調べるために、腎臓の超音波(エコー)検査を行うと、「腎臓が小さい」ことが分かりました。
明らかな「低形成腎」の基準に当てはまるほどではないことも多いのですが、生まれつき腎臓がやや小さく、そのため機能もやや低めであると考えられました。
このパターンに多く見られるeGFR‐Crの推移を以下に示します。

以前から、eGFR-Crは60未満で推移しており、年間のeGFR-Cr低下率(ΔeGFR)は1未満でした。
腎臓に病気がない方でも、年齢とともにeGFR-Crは緩やかに低下していくため、この程度の変化は「年齢相応の自然な変化」と考えられます。
(eGFRは正常でも年間0.5~1.0程度は低下します。)
【パターン5のまとめ】
このパターンのeGFR-Cr低下は、「もともと小さめな腎臓を持っている」という体質によるものと考えられます。
数値だけを見ると慢性腎臓病(CKD)の基準に当てはまりますが、これまでの経過を見ても悪化していく可能性は低く、定期的な経過観察を続けていけば、過度に心配する必要はないパターンといえます。
【今回のまとめ】
この2つは、脱水の影響がほとんどないにもかかわらず、健診でのeGFR-Crが低かったパターンです。
eGFR-Crの低下には、本当の意味での慢性腎臓病(CKD)に当てはまらない場合、当てはまっても経過観察でいい場合も含まれます。
したがって、検査結果を背景とあわせて正しく評価していくことが大切です。
次回は、健診で腎機能低下を疑われた場合の「受診の目安」について考えていきます。

