eGFRのはなし(3)~なぜクレアチニンでなく、GFRなのか?~
2026/01/17
「なぜ健診の結果にある“クレアチニン(Cr)”そのもので評価しないのか?」
「GFRなんて難しいものを使うのか?」
と疑問に思われた方もいるでしょう。
その理由は、血液中のクレアチニンという数値は、「腎機能がある程度低下してからでないと上昇しない」ためです。
つまり、クレアチニンだけを見ていると、腎臓が悪くなり始めている「初期段階」を見逃してしまう危険があるのです。
■ クレアチニンは「悪くなってから」急上昇する

このグラフでは、腎機能が低下していく時間の経過とともに、クレアチニン値がどう変化するかを表したものです。
最初はなだらかですが、右に行く(時間が経過して病気が進む)ほど急カーブを描いて上昇しています。
これを見ると「最後の方になって急に悪化した」と思うかもしれません。
しかし、実は「腎機能は一定のペースで悪くなっているのに、数値にはなかなか現れなかった」だけなのです。
血液中のクレアチニンは、腎機能がある程度まで低下して初めて、明確な異常値として出てきます。
つまり、「クレアチニンが上がってきた」と気づいた時には、すでに腎機能がかなり低下していることもあります。
これがクレアチニンだけで評価する怖さです。
■ 「2倍」になったら機能は「半分」
では、腎臓の働きの低下をもう少し直感的に見る方法はないでしょうか。
そこで参考になるのが、下のグラフに示した「クレアチニンの逆数(1 ÷ クレアチニン)」という見方です。

計算の話になりますが、イメージは単純です。
「クレアチニンが 2倍 に増えた」
➡ 「腎臓の老廃物(ゴミ)を捨てる能力が 1/2(半分) になった」
ということです。
上のグラフでは「急カーブ」に見えていた変化も、下のグラフ(逆数)で見ると、実は「右肩下がりの一直線」であることが分かります。
つまり、クレアチニン値が低いうちは変化が小さく見えても、水面下では着実に、直線的に腎機能の低下が進んでいるのです。
■ 正確な評価のために「GFR」が重要
この「逆数(1/クレアチニン)」を使えば、直線のグラフとして大まかな変化を見ることは可能です。
しかし、元となるクレアチニン自体が、腎臓の働きだけで決まるのではなく、「体内水分量」や「筋肉量(体格・年齢・性別)」に大きく影響されるため、人によって“見え方”がずれてしまうことがあります。
さらに、腎臓病は初期に自覚症状がほとんどないので、クレアチニンだけで判断すると早期の変化を見逃しやすくなります。
そのため、腎機能を正確に判定するにはGFRが重要な意味を持つのです。
次回は、「GFRの測定方法-クリアランス-」について説明します。

