PKD腎臓内科クリニック

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診療案内

腎臓くんのお仕事

腎臓くんは何をしているのでしょうか?
腎臓はお腹の中の背中側に左右1つずつ、握りこぶしくらいの大きさ、そら豆のような形をしています。
血液から尿を作るのが一番大切な仕事です。

なぜヒトは尿を作るのでしょうか。
それは体にいらなくなったゴミ(老廃物)を体の外に出すためです。

腎臓に入った血液はろ過装置である糸球体というところにたどり着きます(下図)。
そこで、たくさんの血液をろ過します。体から出ていっては困るたんぱく質や赤血球などはろ過されないようにできています。

ろ過されてできた最初の尿(原尿)は糸球体から尿細管という細い管を通ります。
そこでさまざまなものを適切に出し入れして最終的な尿になります。塩分や水分の調節もそこで行われます。
皆さんが塩分の多い食事をとっても、水分が多くても少なくても、腎臓くんが調節してくれるので、むくむこともなく、脱水になることもなく生活できるのです。

そのほかにも、血圧を調節する、貧血にならないようにする、骨が弱くならないようにする、からだを弱アルカリ性に保つ、などいろいろ活躍してくれています。

腎臓の働き(腎機能)はどのように評価するのでしょうか。
一番大事なのが、糸球体濾過値(Glomerular Filtration Rate;GFR)です。
これは、腎臓がどれくらい老廃物を排泄することができるかを見たものです。
直接その値を検査することができないので、推定(estimated)GFR、すなわち eGFRという値で示されます。血液検査結果では、筋肉から作られる老廃物のクレアチニン(Creatinine;Cr)の下に値があるはずです。eGFRはクレアチニン、年齢、性別から計算されます。70以上が正常とされます。

主な疾患の説明

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease;CKD)は、

  • 尿検査、血液検査、画像検査、組織検査などで腎障害の存在が明らか
  • 糸球体濾過値(GFR)が60mL/min/1.73m2未満

いずれかが3カ月間以上持続する場合
に診断されます。

重症度に応じてステージが決められています。

CKDステージと腎機能(GFR)

※それぞれの患者さんで年齢、原因疾患、経過、病状は異なるので、あくまで一つの目安です。

腎臓にはある程度“予備力”というものがあります。
それは、生体腎臓移植において腎臓を提供した方(ドナー)の腎機能はほぼ正常に保たれることからもわかります。
一つの腎臓だけで腎臓がしなければならない仕事をこなしているのです。

一方、このような予備力を持っているにもかかわらず、腎機能が低下してくるということは、その予備力を使い果たして、本来の腎臓がこなすべき仕事が出来なくなってきていることを意味します。
CKD3~5になると、少しずつ何らかの変化が生じてきます。
ただ、いずれも腎機能がかなり低下するまで症状として現れてきません。
なので、その病状をしっかりと評価していく必要があります。

腎機能低下により現れる症状

夜間尿
~夜中に起きてトイレに行きませんか?~

腎機能が正常な場合には、夜中にトイレに起きて尿をすることはほとんどないと思います。
寝ている間は水分を摂れませんので、起床時には日中よりも濃い尿が出ます。それは、体が脱水にならないように、脳から“尿を出さないようにするホルモン”(抗利尿ホルモン)が出て、それが腎臓に働き、尿を濃縮しているからです。
しかし、腎機能が低下してくると、そのホルモンに腎臓が反応せず、薄い尿がたくさん作られてしまい、夜間でもトイレに行きたくなります。脱水は腎臓に悪影響を及ぼすので、そうならないようにトイレに行ったら、水分を摂るようにします。

腎性貧血
~階段などを上った時などに、以前よりも“動悸・息切れ”を感じませんか?~

これは、貧血症状の一つです。
朝礼などで倒れてしまうことや立ちくらみがした時に、それを「貧血」ということもあります。
しかし、医学的には、それは「失神発作」ならびに「起立性低血圧」であり、貧血ではありません。
貧血とは、酸素を全身に運んでくれる赤血球の数が少なくなってしまうことを言います。
症状としては、運動時の動悸・息切れ、倦怠感(だるさ)などがあります。

腎臓には多くの血液が運ばれてきます。
赤血球が酸素を運んでくるため、腎臓はその酸素濃度を感知して十分な赤血球が骨髄で造られているかを確かめます。
もし、腎臓くんにとって酸素濃度が低いと感じると、低酸素誘導因子(Hypoxia Inducible Factor;HIF)というものを介して造血ホルモン(エリスロポエチン)をたくさん作り、骨髄に伝えて赤血球を造ってもらうようにします。例えば、胃潰瘍から大量出血して急激に貧血が進行すると、腎臓くんは頑張ってたくさんのエリスロポエチンを出して骨髄さんに赤血球を造ってくれるようにお願いするのです。
しかし、腎機能が低下してくると、十分なエリスロポエチンを供給することができず、赤血球が少なくなり、貧血になります。これが腎性貧血です。
治療として、エリスロポエチン製剤(静脈・皮下注射)、低酸素応答因子分解酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬、経口薬)による治療を行ないます。

高血圧・浮腫
~高血圧を指摘されたり、むくみを感じることはありませんか~

正常な腎機能では、食事から摂取した塩分は、同じ分だけ尿に排出されます。
しかし、腎機能が低下してくると、塩分を排泄する力が落ちてくるために、体の中に塩分がたまりやすくなります。その結果、むくみや高血圧が認められるようになります。それぞれ塩水が血管の外側(むくみ)と血管の内側(高血圧)に溜まることによります。さらに、腎機能の低下は、血圧を調節しているホルモン(レニン・アンジオテンシン)によっても血圧を上昇させます。
反対に高血圧も腎臓に対して負担をかけ、腎障害を進行させる、という悪循環を生じさせます。
したがって血圧調節はとても大事になります。
その対策として、まず塩分を制限することです。
また、自宅での血圧を測定しましょう。
必要であれば、降圧薬での治療を行なっていきます。

腎機能低下により起こりうる病状

ほとんど症状が出ることはありませんが、病態が進行していることを示すものです。

高カリウム血症

カリウムは、塩分を構成するナトリウムとともに大切な電解質です。
食物に多く含まれるカリウムは、体内では適切な量に調節が必要であり、過剰なカリウムは主に腎臓から排泄されます。
しかし、腎機能が低下してくると、その排泄が少なくなり、血液中のカリウム濃度が上がり、高カリウム血症になります。手足のしびれや不整脈が起こることもあり、上がりすぎると心臓が止まってしまう可能性もあるので、注意が必要です。
対策としては、カリウムを多く含む食品を控えることから始めます。腸内でカリウムを吸収させないようにする薬もありますが、その効果は限定的で、便秘などの副作用もあるので、できるだけ食事で調節します。

代謝性アシドーシス
(からだが酸性化する)

ヒトは、食事摂取などにより常に“酸”をつくります。
余分な酸を、肺で炭酸ガスとして排出し、腎臓でそれ以外の“酸”を排泄することにより、体は弱アルカリ性に調節されています。
しかし、腎機能が低下してくると、その“酸”排泄能力が落ちて、体が酸性に傾くようになります。
直接的な症状はほとんどありませんが、気持ち悪いなどの症状が出ることもあります。
治療は、炭酸水素ナトリウム(重曹)の内服です。

二次性副甲状腺亢進症・腎性骨症
(骨が弱くなる)

骨に関わるビタミンDは腎臓で活性化されてはじめてその力を発揮します。
活性化されたビタミンDは、腸管からカルシウム(Ca)を吸収し、血液や骨にカルシウムをバランスよく分布させています。
しかし、腎機能が低下してくると、ビタミンDの活性化がされにくくなり、腸管からのカルシウム吸収が減って、低カルシウム血症になります。体にとって血液中のカルシウムが少なくなることは都合が良くないので、副甲状腺がそれを補正するように頑張って働くことになります。
すなわち、骨から血液へカルシウムが供給されるようになります。
その結果、骨は脆くなり、腎性骨症になります。高度になると、骨の痛み(かかとなど)が出たり、骨折したりすることもあります。
治療は、根本原因である活性型ビタミンD3製剤の内服になります。

慢性腎臓病と診断された時に
注意すること

慢性腎臓病(CKD)では、そのステージが上がるほど、心臓や血管の疾患(CVD)の合併が多くなることが知られています。そのため、両者の危険因子(リスクファクター)に注意を払う必要があります。
具体的には、肥満にならない、禁煙する、過労しない、適度に運動する、睡眠を十分にとるなど生活習慣を見直す。
また、糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症(高脂血症)をしっかりと治療することも大事なことです。

それぞれの腎臓疾患について

急性糸球体腎炎

小児~若い人に多い。
自覚的には、風邪症状に続いて、血尿がでて、次第に尿の量が減ってきて、むくみが出てきます。血圧も上がります。
感染などが原因で、糸球体毛細血管の壁(内皮細胞)が炎症により腫れてしまい、血液が通りにくくなり、尿が少なくなります。
基本的には治癒する疾患ですが、安静、食事制限、薬物治療を行うため入院治療が必要になることが多いため、早めの受診が必要です。

慢性糸球体腎炎

いろいろなタイプの腎炎がありますが、一番多いのがIgA(アイ・ジー・エー)腎症と呼ばれるものです。正確な診断には、腎生検による組織学的検査が必要です。

IgA腎症【難病指定】

腎臓の糸球体に免疫グロブリンのAタイプ(IgA)という蛋白が沈着して炎症が起こり、蛋白尿・血尿がでてくる疾患です。 扁桃腺炎の後に肉眼的血尿(濃い尿)が見られることがあり、それが唯一の自覚症状です。
多くの場合、何十年という長い間炎症が続き、自覚症状がないままに糸球体の濾過機能が低下し、腎機能障害が進行していきます。

しかし、早期に治療を行うことにより、腎機能障害の進行を阻止し、治癒させることも可能です。

治療法

扁桃腺摘出術(扁摘)・ステロイドパルス療法
炎症の火付け役となる扁桃腺を摘出するとともに、炎症(火事)が起こっている腎臓の糸球体の炎症をステロイド・パルス療法で抑える(消火する)ことにより、治癒に導くというものです(下図)。

急速進行性糸球体腎炎【難病指定】

中~高齢者に多く発症します。
発熱など風邪症状が長く続き、普段より濃い尿(血尿)が出るようになり、さらに倦怠感や動悸・息切れなどの貧血症状が出る場合に疑われます。

何らかの原因で血管を攻撃する自己抗体(自分をやっつけるもの)ができて、主に腎臓や肺の毛細血管に高度な炎症を起こします。(この自己抗体は「抗好中球細胞質抗体(Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody;ANCA)」というもので、病名としてANCA関連腎炎(血管炎)とも呼ばれます。)
腎臓の糸球体では、毛細血管が破れ、血液中からさまざまな物質がでてきます。すると糸球体の毛細血管の周りに「半月体」という塊が作られ、糸球体での濾過ができなくなります。(このため病理診断名として「半月体形成性腎炎」と呼ばれます。)
その結果、急速に腎機能が低下し、放っておくと透析治療が必要になる疾患です。
血管の病気なので、肺出血も起こすこともあり、早急な入院治療が必要不可欠です。

ネフローゼ症候群【難病指定】

尿の泡立ちが多くなり、次第に尿の量が減ってきて、むくみが出てくる疾患です。
糸球体の毛細血管には基底膜というものがあり、本来はからだに必要な蛋白は通り抜けることができません。
しかし、その膜に異常が起こると、蛋白が膜を通り抜け、尿の中に大量の蛋白が漏れ出てきます。
その結果、血液中の蛋白が減ってきます。
血液中の蛋白は余計な体液(塩分・水分)を血管の外に出さないようにしていますので、血液中の蛋白の減少により、体のあちこちでむくみがでてきてしまいます。むくみは、体の組織の弱い部分に出やすく、また重力にも影響されます。足のむくみが多いですが、朝は顔(特にまぶた)や背中に認められることもあります。
ちなみに、むくみの中身は純粋な水ではなく、塩水なので、塩分を摂りすぎるとむくみが強くなりますので、塩分を極力控えることが大切な治療になります。

原因はいろいろあり、急に出てくる場合もあれば、数カ月かけてむくみが出てくることもあります。
共通点は、尿の泡立ちとむくみです。体重も増えますが、太ったのではなく体液が増えただけです。

急に発症する
ネフローゼ症候群

数日で発症する疾患の代表は、微小変化型ネフローゼ症候群です。
小児~若い方に多いですが、高齢者でも少なくありません。
自然に良くなることはほとんどなく、検査も含めた入院加療が必要となります。
治療にはよく反応しますが、再発することも多いので、しっかりと治療を継続することが大切です。

緩徐に発症する
ネフローゼ症候群

ゆっくりと発症してくる疾患の代表は、膜性腎症です。
中~高齢者に多い傾向にあります。
数週間~数カ月の間に、むくみが出てきます。尿の泡立ちにも気づくと思います。
自然に良くなる(自然寛解)こともありますが、血栓症*や高脂血症などの合併症も起こす可能性もあるので、早めの診断・治療が必要です。
さらに、膜性腎症では何らかの全身性疾患が隠れている場合があります。
悪性腫瘍(がんなど)がその原因の場合もありますので、全身精査も必要になります。

血栓症*:血管の中で血の塊ができて血の巡りが悪くなり様々な症状を引き起こします。肺塞栓症など重症になることもあります。

その他の
ネフローゼ症候群

その他のネフローゼ症候群の原因として巣状分節性糸球体硬化症膜性増殖性糸球体腎炎が挙げられます。
いずれも腎生検による組織学的検査により診断名がつきます。
さらに、全身性疾患により起こる二次性ネフローゼ症候群も少なくありません。
特に、その中でも最も多いのが糖尿病性腎症です。

治療法

いずれの場合も、診断により治療法が変わってきますので、しっかりと治療に取り組むことが大切です。
なお、頻回再発型ネフローゼ症候群や難治性ネフローゼ症候群には、リツキシマブ治療が保険適応となり、多くの施設で行われています。

多発性嚢胞腎(常染色体優性多発性嚢胞腎:ADPKD)【難病指定】

腎臓にたくさんの嚢胞ができて、年齢とともにその数が増加し、そのために腎臓が大きくなるとともに、腎機能が低下していく疾患です。
原因は、腎臓の尿細管の“太さ(径)”を調節する遺伝子に異常が起こることによります。

多くの場合、ご両親のどちらかが同じ疾患をもっています。
ただ、その進行度は同じ家系内でもさまざまであり、同じ経過をたどるわけではありません。

成人になって人間ドックや健診での腹部超音波検査で診断されることが多く、PKDの診断はそれほど難しくありません。

大事なことは、診断された後に必要な検査を行い、病状を把握することです。

  • 腎機能
  • 腎臓の大きさ(両側総腎容積):腹部CT、腹部MRIを行います。

また、PKDには特有の合併症がありますので、その精査も必要です。

  • 高血圧:腎機能が良くても、若年でも合併しやすいので、血圧が高ければ、早期から治療を行います。
  • 脳動脈瘤:一般の方より頻度が高く、頭部MRI検査を行います。
  • 肝嚢胞:腹部CT、腹部MRIでわかります。
  • 心臓弁膜症:心臓超音波検査を行います。

現在は、嚢胞腎の進行を遅らせる治療があります。

治療法

バソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)
強い利尿薬で、1日5L程度の尿が出る薬のため、厳しい適応基準が定められています。
また治療開始時には入院が必要になり、その後も1カ月に1回の検査が義務付けられています。
現時点では、PKDの唯一の治療薬であり、その適応をしっかりと見極めることが大事になります。

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