eGFRのはなし(4)~GFRの測定方法-クリアランス-~
2026/01/20
前回、クレアチニンより糸球体ろ過量(GFR)が重要であることを書きました。
しかし、GFRそのものを直接測定することができないのが厄介なのです。
ではどうするか?
間接的ではありますが、正確に測定する方法として「クリアランス」というものを使います。
■クリアランス
「クリアランス」は、お店でシーズン終盤や在庫処分時に行われる「クリアランスセール(在庫一掃)」と同じような意味合いです。
医学的には、特定の物質を血液から「排出する」「除去する」、すなわち「血液をきれいにする(浄化する)」という意味で使われます。
腎臓の検査でのクリアランスは
「1分間に血液何mLから、老廃物(ゴミ)が取り除かれたと考えられるか」
を表す値です。(単位:mL/分)
具体的に式で表すと、次のようになります。
クリアランス(mL/分)=(尿中の濃度x1分間の尿量)÷ 血液中の濃度
ただ、実際に「1分間だけ尿を集める」のは難しいため、通常は尿を1日溜めて(蓄尿)、尿量と尿中の濃度、血液中の濃度を測定して計算します。
■クレアチニン・クリアランス(Ccr)
「クリアランス」に使う「老廃物(ゴミ)」として、最もよく使われてきたのがクレアチニンです。
クレアチニンは、筋肉から一定量つくられ腎臓から尿へ排泄されること、血液でも尿でも簡便に比較的安価で測定できます。
そのため、以前は蓄尿を行ってCcrを計算し、GFRの目安として用いることが一般的でした。
今でも、薬の投与量(特に腎機能で調整が必要な薬)は、このCcrを基準にしています。
しかし、今はあまり使われていません。
なぜでしょうか?
実は、Ccrが正確なGFRを表していないからです。
クレアチニンは「糸球体から出ていく」だけでなく、「尿細管からも出ていく」ので、尿に出てくるクレアチニン量が糸球体ろ過量に“上乗せ”されてしまいます。(後ほど図解します)
そのために、CcrはGFRを実際よりも良く(高く)見せてしまう(過大評価)という欠点があるのです。
そこで、登場してきたのが「クレアチニン」の代わりとなる「イヌリン」というものです。
■イヌリン・クリアランス(Cin)
歴史的な話になりますが、1930年代に科学者たちが、
「糸球体を通り、尿細管で上乗せされないで、そのまま尿に出てくる物質」
を探し当てました。
それが「イヌリン」です。
ゴボウ、キクイモや花のダリアの根に含まれる食物繊維の一種です。
イヌリンには以下の特徴があります。
▪体内にもともとある物質ではない(分解されない)。
▪ひたすら腎臓の糸球体を通過して尿に出てくるだけ。
そのため、イヌリンをクレアチニンの代わりに使う「イヌリン・クリアランス(Cin)」が、最も正確にGFRを測定する方法(ゴールドスタンダード)になりました。
ただし、イヌリンは体内にないので、それをある一定時間で点滴注射し、血液と尿のイヌリン濃度を数回測定して、クリアランスを計算することになります。
大変な検査ではありますが、実際に、eGFR(推定GFR)計算式のもとになっているのが、このイヌリン・クリアランス(Cin)で得られたデータなのです。
■クレアチニン・クリアランス(Ccr)とイヌリン・クリアランス(Cin)の違い
では、ここで両者の違いを図解します。

【左図:クレアチニン】
クレアチニン(赤玉)は、糸球体でろ過される(緑の矢印)だけでなく、尿細管からも分泌されて出ていきます(青の矢印)。
すなわち、尿に出てくるクレアチニンは「糸球体でろ過された分」に「尿細管から分泌された分」が上乗せされます。
➡尿に出るクレアチニン(赤玉)が多くなるため、計算上Ccrは実際に糸球体でろ過される量、すなわち真のGFRよりも高い値になります。
【右図:イヌリン】
一方、イヌリン(青玉)は、尿細管からは分泌されないので、純粋に「糸球体からのろ過量のみ」が尿に出てきます。
➡尿に出るイヌリン(青玉)は糸球体でろ過された分だけなので、Cinは真のGFRを表していると考えられます。
■クリアランスのまとめ
GFRの測定方法として、クリアランスはとても大事な検査です。
しかし、クレアチニン・クリアランスは蓄尿が必要、イヌリン・クリアランスは点滴が必要で、いずれにしても患者さんにとって負担が大きく煩雑です。
そこで、「もっと簡単にGFRを知る」方法として、eGFR(推定GFR)という概念が出てきました。
次回は、その話をします。

