eGFRのはなし(11)~シスタチンCについて~
2026/02/26
今回は、腎機能を評価する、もう一つの指標「シスタチンC」についてのはなしをします。
腎機能を評価する指標として一般的に使われるクレアチニンは、
▪筋肉から産生されること
▪糸球体で濾過されるだけでなく、尿細管でも分泌されること
から、筋肉量が多い方や脱水気味の方では、腎機能が正常でもクレアチニンの値が本来より高く出ます。
そのために、eGFR-Crが実際よりも低く見積もられてしまいます。
※これまでクレアチニンから計算したeGFRを単に”eGFR”と表記していましたが、シスタチンCから計算した”eGFR-Cys”と区別するために、”eGFR-Cr”と表記します。
■シスタチンCって何?(クレアチニンとの違い)
一方、シスタチンCは、全身の細胞で一定のペースで作られる老廃物で、
最大の特徴は、
「筋肉量や体内水分量に左右されにくい」
ことです。
これにより、より正確な腎機能の評価ができるとされています。(補足1)
このクレアチニンとシスタチンCの違いを表にまとめます。

特に大事なのが、下図に示すように、クレアチニンは糸球体ろ過に加えて、尿細管から分泌されます。
それに対して、シスタチンCは糸球体ろ過のみだということです。

このような違いがあるために、クレアチニン、シスタチンCそれぞれの値を用いて計算されたeGFR、
すなわちeGFR‐CrとeGFR‐Cysとの間にしばしば大きな乖離を認めることが少なくありません。
■シスタチンCを最初から調べられないの?
糸球体だけから濾過されるなら、クレアチニンでなく、「シスタチンCを最初から調べればいいのではないか」と疑問を抱く方もいらっしゃると思います。
国際的にはクレアチニンとシスタチンCを併用することも推奨されており、両者を組み合わせた「eGFR Cr-Cys式」も作られています。
しかし、実際には、
▪クレアチニンに比べて検査コストが高い
▪施設や健診でまだ一般的でない
▪保険診療では測定回数などの制限がある
といった理由で、日本では広くは使用されていないのが現状です。(補足1)
■「シスタチンC・クリアランス」はできない
また、イヌリン・クリアランス(eGFRのはなし(4))の代わりに「正確なクリアランス検査もできるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、シスタチンCは尿細管で分解されてしまうので、尿に出てきません。つまり、尿を使った計算(クリアランスなど)はできないのです。
■シスタチンCのメリット
クレアチニンは、尿細管から追加で分泌されることから、脱水の影響を受けやすいことを説明しました(eGFRのはなし(9))。
それに対して、シスタチンCは、尿細管からの分泌はなく、糸球体からのろ過だけなので、脱水の影響が少ないことが大きな利点です。
ただ、全く影響を受けないわけでなく、血液濃縮や腎血流量・糸球体ろ過量の低下による影響は少し受けます。しかし、クレアチニンほど大きい影響ではないということです。
もう一つの強みは、筋肉量の影響を受けにくい点です。
前回、クレアチニンが筋肉量に大きく影響されることを説明しました。
しかし、シスタチンCは筋肉量に関わらず、腎機能をより正しく判定できます。
実は最近、この性質を逆手にとって、クレアチニンとシスタチンCの比(Cr/Cys比)が「筋肉量の指標」にも応用されています。
次回、このCr/Cys比について解説します。
【補足】
1.シスタチンC測定
比較的新しい検査方法なので、測定費用がクレアチニン測定よりも多くかかるため、通常の健診では行われません。
保険診療においても腎機能低下が疑われる患者のみ、また3か月に1回しか測定できません。
2.シスタチンC濃度に影響する要因
▪甲状腺機能低下:全身の細胞の代謝が鈍り、シスタチンCの産生量も減少するため、シスタチンC濃度は下がり、eGFRcysは高めになります。
▪ステロイド薬の服用(特に高用量):シスタチンCの遺伝子発現を亢進させ、産生を増加させるため、シスタチンC濃度は上がり、eGFRcysは低めになります。
▪そのほか、炎症、悪性腫瘍、肝不全、喫煙なども影響するとされています。

