eGFRのはなし(13)~クレアチニン/シスタチンC比とeGFR~
2026/03/22
前回は、Cr/Cys比(クレアチニン/シスタチンC比)が筋肉量を反映するひとつの指標となることをお話しました。
今回は、「Cr/Cys比を見ることで何がわかるのか」を実際のデータで見てみます。
■健診結果と外来でのeGFRの「差」
健診で「腎機能低下」と判定された方が、外来を受診したときに、eGFRがどのくらい変化したかを見てみます。
グラフの縦軸「ΔeGFR」は、外来と健診のeGFRの差[(外来のeGFR)ー(健診のeGFR)]を示しています。
値が大きいほど、外来でeGFRが高くなっている、つまり健診より改善して見えていることを意味します。
Cr/Cys比によって、どのような違いがあるのでしょうか。


▪グラフから見える傾向
男女ともに、Cr/Cys比が低い群(筋肉量が少ない群)ほど、eGFRの改善幅(ΔeGFR)が大きい傾向がみられました。
一方、Cr/Cys比が高い群では、その差は小さく、中にはほとんど変わらない方や、むしろ下がっている方もいました。
▪なぜCr/Cys比が高いとeGFRは上昇しにくいのか?
筋肉量が多い人は、もともと体内で作られるクレアチニンの量が多くなります。
ここでいう「筋肉量が多い人」は、必ずしも運動している人や、いわゆる筋肉質の人だけではありません。
運動習慣がなくても、体格が大きい人、特に身長が高めの人では、Cr/Cys比が高くなることがあります。
Cr/Cys比が高い方では、健診時によくある脱水などの一時的な影響が改善しても、クレアチニンが高めのままになりやすいと考えられます。
そのため、実際の腎機能とは別に、計算上のeGFR-Crが低めに出やすくなります。
つまり、Cr/Cys比が高い方の「eGFR低値」には、腎機能低下だけでなく、筋肉量や体格の影響も含まれている可能性があるのです。
▪Cr/Cys比が低い群で考えるべきこと
前回、Cr/Cys比が極端に低い方が1名みられたことに触れました。
その方では、健診でのeGFR-Crは50台でしたが、外来では60台に上昇していました。
健診の際には食事・水分制限があり、十分に水分がとれていなかったようです。
一方、外来を受診したときは、普段通りに食事・水分をとられていました。
このため、健診時には脱水の影響でクレアチニンが高めになり、eGFR-Crが低く見えていた可能性があります。
しかし、eGFR-Cysは50台でした。
このことから、外来でeGFR-Crが改善していても、実際には腎機能低下が隠れている可能性があります。
なぜなら、筋肉量が少ない方ではクレアチニンが低くなりやすく、eGFR-Crが実際より良く見えてしまうことがあるからです。
このような場合には、シスタチンCをみることで、eGFR-Crだけでは分かりにくい腎機能低下が見つかることがあります。
■まとめ
▪Cr/Cys比が高い(筋肉が多い、あるいは体格が大きい)人:eGFR-Crが低く出ても、実際の腎機能はそれほど悪くないことがあります。
▪Cr/Cys比が低い(筋肉が少ない、あるいは体格が小さい)人: eGFR-Crが比較的高くても、実際の腎機能はそれほど良くない可能性があります。
つまり、健診eGFRを正しく解釈するには、脱水の影響に加えて、Cr/Cys比もあわせてみることで、eGFR-Crをより適切に解釈しやすくなります。
次回は、健診で腎機能異常を指摘された方のeGFRを、いくつかの代表的なパターンに分けて考えてみます。

