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院長ブログ

トルバプタンのはなし(4)~クレアチニンが上がった、大丈夫?~

2022/08/08

お薬(トルバプタン(サムスカ))に慣れてきたでしょうか。

 

くすりを飲み始めて約1か月後に外来受診されると思います。

そこで、クレアチニン値が上がって、推定糸球体濾過値(eGFR)が下がっていて、心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

でも、心配しなくて大丈夫です。

トルバプタンの作用により、見かけ上、クレアチニン値が上がっただけです。

 

尿を出さないようにするホルモン「バソプレシン」には、もともと糸球体濾過量を増やす(腎臓くんを頑張らせる)作用があります。

トルバプタンは、その作用を抑えることによって糸球体濾過量が減るので、クレアチニンが上がり、その結果eGFRの値も下がります。(*1)

 

このような薬は他にもあります。

代表的なのは、血圧の薬で、アンジオテンシン受容体拮抗薬「ARB」とよばれるものです。

多発性嚢胞腎(ADPKD)の患者さんは、高血圧を合併しやすいので、この薬を飲んでいる方も多いと思います。

このARBは直接血管に作用し、糸球体濾過量を減らします。(*2)

 

その結果、トルバプタンと同様にクレアチニンが上がり、eGFRの値も下がります。

しかし、糸球体濾過量を減らすということは、腎臓くんが頑張らなくてもいいので、長期的にみると、腎臓の働きが守られること(腎保護効果)になります。

 

トルバプタン開始後のGFRの推移のイメージを示します。

 

緑の線はこれまでの経過と同じGFRの推移です。
トルバプタン開始後、赤い線のように一旦GFRは低下しますが、その後のGFRの低下速度は緩やかになります。

これは、トルバプタンの臨床試験でも同様の結果が示されています。

 

このように、飲み始めのクレアチンの上昇、eGFRの低下は気にしなくて大丈夫です。

むしろ、eGFRが下がったほうが薬に対する反応がある、すなわち “効きがいい” のかもしれません。(*3)

 

さあ、これから長期戦の始まりです。

 

無理せずに、喉の渇きに合わせて、しっかりと水分を摂りましょう。

 

 

(補足)もう少し詳しく知りたい方は、以下も読んでみてください。

*1 トルバプタンの作用

バソプレシンは、糸球体に続く尿細管で “水” とともに、尿素窒素(BUN)の元になる ”尿素” も腎臓の中に戻します。
すると、腎臓くんは、GFRを上げて、もっとたくさん糸球体から濾過しようとして頑張ってしまいます。

 

トルバプタンを飲むと、その作用が抑えられるので、GFRは一旦下がります。

 

 

*2 アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の作用

糸球体には、輸入細動脈から血液が運ばれてきます。アンジオテンシンⅡは、輸出細動脈を収縮させて、糸球体の中の圧力を上げて、老廃物を濾過しています。腎機能が悪くなると、腎臓くんは余計に頑張ってしまいます。

 

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、その頑張りを少し和らげてくれます。
輸出細動脈を拡げて、GFRを少なくしているのです。

 

 

*3 私たちの小規模な研究では、eGFRの初期低下が大きい方が約3年間の腎機能低下速度が緩やかであったことがわかりました。

(Akihisa T, et al. :Initial decline in eGFR to predict tolvaptan response in autosomal dominant polycystic kidney disease. Clin Exp Nephrol. 26;540-551, 2022.)

 

 

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