トルバプタンのはなし(10) ~くすりは増やしたほうがいい? その壱~
2023/03/20
トルバプタンには薬の用量依存性があり、増量したほうがより有効だといわれています。
私たちの研究でも「体重当たりのトルバプタンの量」が多いほど、下図のように腎機能の低下を抑えたことがわかりました。
この図は、トルバプタンの用量が多いほど、飲んでいる期間のeGFRの低下が小さいことを示しています。(*1)
ただ、やみくもにトルバプタンを増量しても、水分補給が十分できずに脱水状態になれば、逆効果です。
その理由について説明していきます。
トルバプタンは、「バソプレシンの受け皿である受容体」をバソプレシンの攻撃から守っていると考えてください。
バソプレシン(相手)が受容体に作用できないことがわかると、相手はその数を増やしてきます。
下のグラフ(*2)がその証拠です。
トルバプタンを飲むとバソプレシンは増えます。
ただでさえ、このように相手は増えているのに、ここで脱水になってしまうと、さらに相手(バソプレシン)は増えてきます。
トルバプタンは1日中ずっと受容体を守れているわけではないので、十分に水分補給ができないと、バソプレシンが受容体に結合する割合が増えます。
このように、トルバプタンは水分の摂取量に依存して効果を発揮する薬と考えられます。
水分摂取が十分にできる場合は、増量したほうが効果を期待できます。
しかし、水分摂取が十分にできない状態で増量すると、その効果が減少する可能性があります。
(”その弐”に続く)
*1.Akihisa T, et al. “Dose-Dependent Effect of Tolvaptan on Renal Prognosis in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease.” Kidney360 2: 1148-1151, 2021.
*2.Makabe S, et al. “Urinary Aquaporin 2 as a Potential Indicator Predicting Tolvaptan Response in Patients With ADPKD.” Kidney Int Rep 6: 2436-2444, 2021.