eGFRのはなし(1)~健診で慢性腎臓病(CKD)が疑われた~
2026/01/13
最近、当院では健康診断で「eGFR(推定糸球体ろ過量)の低下」、特に「60未満」「低下のスピードが速い」ことを指摘され、受診する方が増えています。
■健診での「経過観察」の意味
健診での「C(経過観察)」判定は、基本的に「1年後の健診で再検査」という意味合いを持ちます。
一方で、中には「数か月以内に再検査(C3、C6)」といった指示もあり、不安をかかえて来院される方もいます。
これまで健診で異常を指摘されたことのない方にとっては、「経過観察」といっても心配になるのだと思います。
■CKDを調べてみると不安が強くなる
「自分は慢性腎臓病(CKD)だ」と思い込み、いろいろ本で調べたり、ネットで検索したりする方もいます。
そこには、CKDについて
「さまざまな合併症が出てくる」
「蛋白質やカリウムの制限が必要」
「進行すると元に戻ることはない」
「10年後には腎不全となり透析・移植が必要になる」
などと書かれていることもあります。
中には、不安のあまり、蛋白制限などの食事療法を自己判断で始めている方もいます。
確かに、「本当に治療が必要なCKD」であれば、腎不全に進行しないようにしっかりとした対策が必要なこともあります。
ただし、その対策はCKDの原因や病状によって異なるため、自己流で行うのはかえって危険なこともあります。
■そもそも「CKD」とは?
これから「eGFRのはなし」をしていきますが、その前に「CKD」の基本を整理します。
CKDは「以下の状態が3か月以上続いていること」が前提で、以下の2つのパターンで診断されます。
1.「尿検査や画像検査などで腎障害がある」
2.「eGFR60未満である」
1.「尿検査や画像検査などで腎障害がある」
eGFRに関係なく、検査結果などから腎臓の病気が確認される、あるいは疑いがある場合です。
具体的には、糸球体腎炎(IgA腎症など)、糖尿病性腎症、高血圧による腎硬化症、多発性嚢胞腎などが含まれます。
これらは将来的に腎不全に進行する可能性があり、一度は腎臓専門医の診療を受けることが奨められます。
2.「eGFR60未満である」
高血圧や糖尿病を含め、腎臓病につながる病気がある方(または疑われる方)がeGFR60未満の場合には注意が必要です。
一方、持病がなく、健診で他の検査項目で異常を指摘されず、尿異常もない方の場合、本当は「腎臓に病気はない」「CKDではない」のに、eGFRの数値だけが60を下回っているために「CKDの疑い」と判定されることがあります。
しかし、後者のような方の再検査をしてみると、CKDに該当せず「これまで通り健診を続けていただければ大丈夫」と判断され、一旦診療終了になる方が多いのが実情です。
■健診の役割
健診というのは「病気を早期に発見する」という目的で行われます。
そのため、少しでもリスクがある人を見逃さないように、あえて厳しい基準で判定が出されます。
ここで、糖尿病の診断に用いられるヘモグロビンA1c(HbA1c)の基準と比較してみます。

HbA1cは、医療機関では6.2%までが正常範囲とされますが、健診では5.6%以上で異常と判定されます。
しかし、6.5%まではCの経過観察で「グレーゾーン」と考えられます。
そこに「特定保健指導(メタボ健診)」という受け皿があり、まずは生活習慣を見直しましょう、という明確なステップが用意されているため、すぐに医療機関を受診する方は少ないと思います。
一方、eGFRには、このような「中間の受け皿」がありません(判断が難しく簡単には作れないのだと思います)。

そのためか、グレーゾーンと考えられる「45以上60未満」に対して、「経過観察」ではなく、いきなり「要再検査」「医療機関受診」の通知を出している健診施設もあります。
HbA1cが「1~2か月の血糖値の平均」という分かりやすい指標であるのに対し、eGFRは年齢、性別、体格や検査条件によっても変動しやすい値であることから、あいまいな判定になってしまうのです。
次回から、このわかりにくい「eGFR」について、順を追って説明していきます。

