PKD腎臓内科クリニック

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院長ブログ

塩分のはなし

2022/04/16

みなさん、塩分を気にしていますか。

 

世間では、塩分は控えるように、ということが一般常識のようになっています。

 

生物はおよそ4億年前に海から陸に上がってきました。

初めは塩分を摂ることが難しく、塩分を体にためて血圧を上げるホルモン(レニン・アンジオテンシンなど)が発達しました。

 

しかし、飽食の時代になり、人間は塩分を必要以上に摂るようになりました。

すると、血圧が上がり、それによる病気が増えてきました。

今では多くの方が血圧を下げる薬としてレニン・アンジオテンシン系を抑える薬を飲んでいるわけです。

 

では、塩分はなぜ血圧を上げるのでしょうか。

 

塩分(塩化ナトリウム)の中のナトリウムは水を引き連れて動きます。

塩分を多くとると、体の中にナトリウムが吸収され、血液中に入ります。

ナトリウムが多くなると血管内に入る水も多くなり、血管内の容量が増えます。

 

腎臓くんが頑張って余計なナトリウムを排泄するように働きますが、ちょっと時間がかかります(2~3日)。

なので、その間は血液量が増えたままの状態になります。

 

血圧のところでお話ししたように、血液量は血圧を左右します。

若いころは血管も柔軟であり、心臓も腎臓も異常がなければ、血圧もそれほど上がらず、問題になることはないでしょう。

 

ただ人間は年を取ると、血管の動脈硬化が進んできます。

すると血管は自由に膨らむことができなくなるため、血液量が増えると血圧を上げるようになります。

 

ここで、ご主人(あなた)と体の部分(ご主人を支えているみんな)のやり取りを想像してみましょう。

 

ご主人:「この味、たまんないよな。でも、もう少し醤油かけたほうがうまそうだな。」

血管:「うわ、塩分がたくさん入ってきたぞ。浸透圧が上がっている。早く、水分を摂るように指令を出してよ、脳みそさん」

 

脳みそ(口渇中枢):「わかりました。水分を摂るように指令を出しました」

食後のご主人:「あ~、喉乾いた。ちょっと水飲むか。ゴクゴクゴク。」

 

翌朝、

ご主人:「今日はちょっと顔がむくんでるな」

血管:「塩水があふれてるよ。こっちも窮屈で血圧も上がってるよ。腎臓くん、早く塩分出してよ。」

 

腎臓:「わかりました。でも、他にもたくさんの仕事を抱えていてすぐには対応できないんですよ。2~3日で何とかしますから、待っていてください」

 

夕方、

ご主人:「今日も仕事の後のごはんは美味しいね。満腹、ご馳走様。あ~喉乾いた」

血管:「まただ。もうこっちはパンパンだよ。長年の疲れがたまって、拡がることもできないし。腎臓くん、頑張って塩も水も出してよ。心臓さん、そんなに血液送ってこないでよ。」

 

腎臓:「日夜、努力はしていますが、1日の仕事は決まっているので、これ以上はできないんです。それに私も疲れてきています。」

 

心臓:「そんなことを言っても、身体の皆さんは(血液で運ばれる)酸素を欲しがっているので、私はみなさんのために頑張っているのです。私も少し疲れてきていて、最近、働きすぎると、私が働くための酸素(血液)が少なくなる時があって、くらくらするときがあるのです。ご主人様は胸の痛みを感じていると思いますが、まだ病院に行ってくれません」

 

ご主人様へ、

お仕事も大変だと思いますが、あなたを支えてくれている血管のみなさん、心臓さん、腎臓くんのことも考えてあげてくださいね。

 

血圧が正常であれば、直ちに塩分制限をする必要はありませんが、人間の生活習慣とは恐ろしいもので、すぐに塩分を制限しようと思っても簡単に出来るものではありません。

 

ただ、こんな話を聞いたことがあります。

長野県では脳卒中が多く、県で塩分制限を指導したところ、その発症率が抑えられたそうです。

塩分を控えた味噌汁の味に慣れたご主人に、奥様が昔の味噌汁を作ったところ、

ご主人は、「こんな “しょっぱい” 味噌汁は飲めねえ」と言ったそうです。

そうです。もう今の味噌汁の味に慣れていたのです。

 

コーヒー、紅茶でも砂糖を入れないほうが、本来の味を楽しめるような気がします。

同様に、必要以上の調味料(特に塩や醤油)を使うより、食材の味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

塩分制限の目安は1日6g以下と言われていますが、中々難しいものです。

少しずつ塩分摂取量を少なくしていけば良いと思います。

 

塩分摂取量を正確に把握することは難しいですが、尿の成分(尿中ナトリウム)を調べることにより推定することができます*1。

 

また⾷品に表⽰されているナトリウム量(g)は、それを2.54倍すると塩分相当量(g)になります。参考にしてください。

⾷品表⽰のナトリウム量(g)× 2.54 = 塩分相当量(g)

 

中には塩気を感じられないような食品でも塩分がかなり入っているものもあるので、注意が必要です。

代表的なのがパン、麺(自体)、加工食品(スープ、ハム、ソーセージ、おでんの具になる練り製品、など)、お菓子・スイーツなどです。

調味料では、調理酢、ドレッシングなどです。

 

また減塩だからいいというわけではありません。

梅干し、漬物、みそ汁などは、それらを食べる量や回数を少なくすることで1日の塩分摂取量を減らすことができます。

 

食事中あるいは食後に喉が渇き、水分をたくさん飲みたくなる場合は、塩分をたくさん摂ったと考えてください。

 

まず塩分を気にすることから始めましょう。

 

*1       一日分の尿を溜める蓄尿検査が一番正確です。ただ蓄尿は少し大変なので、当院では1回の尿検査で推定しています。ただ来院時の尿検査よりも早朝尿の検査の方がより正確なので、できる方は朝起きて最初の尿を持参していただいています。

 

嚢胞腎で、特にトルバプタンを飲んでいる方では、塩分を制限したほうがいい理由がもう一つあります。

塩分を多くとると喉が渇き、水分をたくさん摂取します。

ただし、その水分は、塩分とともに仲良く尿に出て行ってしまうので、実質的な水分補給にはなりません。

水分をたくさん摂っているのに、いつもより喉が渇く場合は、塩分の摂りすぎと考えてください。

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