健康診断のはなし(1)~尿蛋白陽性といわれたら~
2022/08/04
皆さん、年に1回は健康診断で尿検査(検尿)を受けると思います。
日本では、この検尿システムが長年行われてきました。
症状の出にくい腎臓病を発見するためです。
このシステムによって、特に慢性糸球体腎炎が早期に発見されるようになりました。
その結果、透析になってしまう腎炎の患者さんが確実に減っています。
健康診断において、腎臓病発見の手がかりとなる項目は次の3つがあります。
● 尿蛋白
● 尿潜血
● 血清クレアチニン / eGFR(推定糸球体ろ過値)
この3項目について順番に話をしていきます。
最初は、”尿蛋白” です。
蛋白は体にとって必要なものなので、腎臓くんは蛋白を漏らさないようにしています。
ろ過装置である糸球体は “ざる” のようになっていて、老廃物はそこをすり抜けて出ていきます。
ここで、蛋白を”米粒くん”に 、血尿として出てくる赤血球を”トマトちゃん” に扮してもらいます。
“ざる” が壊れていなければ、”米粒くん” も ”トマトちゃん” も “ざる” の中に残ります。
でも、“ざる” が何かのきっかけで壊れて網の目が粗くなってくると、”トマトちゃん” は出ていきませんが、”米粒くん” は少しずつ漏れていってしまいます。
「尿蛋白が出る」ということで、ろ過装置である「糸球体」に “ざる” の目を粗くするような異変があることを知らせてくれているのです。
正常でもわずかに尿蛋白は出ています。
なので、どのくらい出ているのか、その程度が重要です。
健康診断では、「前日の夕食後は飲食禁止、水は少量ならOK」とされていることが多いと思います。
これは、血液検査に食事の影響が出ないようにするため、腹部超音波検査で胆のうが収縮しないようにするため、胃カメラや胃バリウム検査のときに胃の中を空っぽにしておくためです。
では、そのような状態で採取した尿はどのようになるでしょうか。
体は脱水気味になるので、“濃い” 尿になります。(“水分のはなし”を参照ください)
健康診断では、試験紙(法)で蛋白の濃度に応じて(-)~(3+)で判定します。
尿が濃いと蛋白の濃度も上がるので、正常(腎臓に異常がない)の方でも陽性(+)になることがあります。
その場合、再検査を指示されます。
ちなみに再検査をする際は、普段通りの生活をしてください。
ただ、熱があるときや運動をした後に受診するのは避けてください。正常でも蛋白がでてしまうことがあります(生理的蛋白尿)。
再検査でも陽性の場合、病的なものかどうかを判定する必要があります。
そのために、試験紙法だけでなく、尿蛋白と尿クレアチニンの量を測って、その比をとって判定します。
● 尿蛋白・クレアチニン比 ≒「1日に出る尿蛋白の量」
とされ、 ”尿蛋白の程度” を反映します。
この値が正常範囲内(0.15未満)であれば、病的な蛋白尿はないと考えていいでしょう。
このように健診で “濃い尿” のために尿蛋白を指摘されても、再検査で尿蛋白・クレアチニン比に異常がなかった方は、次の健診では、普段から水分を摂るように心がけましょう。少なくとも前日はしっかり水分を摂って、体に水分をストックしておいてください。
一方、尿蛋白・クレアチニン比が基準値以上だった場合は、腎臓専門医を受診して、しっかりと腎臓病の検査を受けてください。
(詳しくはホームページの「腎臓内科を受診してほしい方・尿検査で尿蛋白や尿潜血を指摘された」を参照ください)