PKD腎臓内科クリニック

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院長ブログ

トルバプタンのはなし(6) ~腎臓が大きくなった.薬は効いてるの?~

2022/11/16

トルバプタン(サムスカ®)は、嚢胞を成長させないようにする薬です。

なので、腎臓の大きさ(腎容積)の増大率が、効果を判定する一つの指標として用いられます。

ただ、期待したほどその増大率が小さくなっていなかった患者さんもいると思います。

でも、がっかりしないでください。

 

増大率が小さくならなくても、トルバプタンには腎機能の低下を抑制する作用があるからです。

 

今回は、それを具体的に示した論文を紹介します。

2021年に日本腎臓学会英文誌に発表された順天堂大学の堀江先生らの論文です。*1

 

臨床試験に参加した日本人の患者さんについて分析したものです。

臨床試験では、本当の薬(トルバプタン)と ”にせもの” の薬(プラセボ)を飲む患者さんに分けられます。

両者を比較すると、トルバプタンを飲んだ患者さんのほうが、腎臓の増大率も腎機能低下率も小さくなっていました。

ただ、トルバプタンを飲んだ患者さんの中に、プラセボの患者さんと同じように腎容積が大きくなった方(図の真ん中)がいました。
それにも関わらず、プラセボの患者さんと比較すると、腎機能の低下抑制効果が認められました。

まとめてみると、この図のようになります。

 

 

一番左が、トルバプタンを飲んで腎臓が大きくならなかった患者さんです。
トルバプタンを飲んだ患者さんは、腎臓の大きさの変化に関わらず、腎機能の低下が抑制されていました。

 

どういうことでしょうか。

これまでは、トルバプタンが嚢胞を大きくしないように働くことによって、腎臓が大きくならずに腎機能低下を抑制するものと考えられていました。

しかし、この結果は、トルバプタンが嚢胞増大を抑制するだけではなく、直接的に腎機能低下を防ぐ働きを持っていることを示しています。

その働きは、まさにバソプレシンの作用をトルバプタンが抑えた結果であり、

(1)“トルバプタンのはなし(4)“でお話しした「糸球体の働きすぎの抑制」

(2) ”多発性嚢胞腎・研究のはなし(1)”で紹介した「腎間質の線維化の抑制」

によるものと考えられます。

 

腎臓の大きさも一つの指標ですが、腎機能が最も大切な指標です。

 

この腎機能低下を抑制するというトルバプタンの効果を引き出すためには、適切な水分摂取がとても重要です。

次回から、適切な水分摂取の指標についてのはなしをしていきます。

 

 

*1 Horie S, Muto S, Kawano H, et al. “Preservation of kidney  function irrelevant of total kidney volume growth rate with tolvaptan treatment in patients with autosomal dominant polycystic kidney disease. Clin Exp Nephrol 25:467-478, 2021.

 

 

 

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